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賃上げ促進税制の基本

「人手が足りない。給料を上げないと人が採れない。でも、上げたら利益が飛ぶ」——製造業・建設業の社長さんとの面談で、いちばんよく出る悩みかもしれません。

この悩みに対する国の答えのひとつが、賃上げ促進税制です。給与を増やした会社の法人税(個人事業なら所得税)の負担を軽くする、という仕組みです。人件費の話と税金の話がつながっている、ということを知っておくだけで、賃上げの意思決定が少し変わります。この記事で基本を整理します。

仕組み——給与を増やした分の一部が税額控除になる

賃上げ促進税制をひとことで言えば、「前の年度より従業員への給与支給額を一定割合以上増やした場合に、増やした額の一部を法人税額から差し引ける(税額控除)」という制度です。

ポイントは「税額控除」であることです。経費が増えて課税所得が減る、という間接的な話ではなく、計算された税額そのものから差し引かれます。効き方が直接的なのです。

控除の割合は、給与の増加率や、後述する上乗せ要件を満たすかどうかで変わります。中小企業向けの枠では比較的高い控除率が用意される場合がありますが、具体的な率・要件は年度により変わります。目安として捉え、最新は公式の案内・公募要領でご確認ください。

上乗せの仕組み——教育訓練費など

この税制には、基本の控除に加えて「上乗せ」の仕組みが設けられる場合があります。たとえば次のようなものです。

人を育てる投資や、働きやすい職場づくりが、そのまま税負担の軽減につながる設計です。「研修に行かせたいが費用が」という会社ほど、確認する価値があります。

赤字の年はどうなるか

ここは中小企業にとって大事な論点です。税額控除は納める税金があってこそ効くため、赤字の年度は効果を受けにくいのが原則でした。この点について、中小企業向けには、控除しきれなかった分を翌年度以降に繰り越せる仕組みが設けられる場合があります。

「今年は赤字だから関係ない」と切り捨てる前に、繰り越しの可否を確認する。この一手間で、黒字転換した年の税負担が変わる場合があります。適用の可否や繰越の期間は年度により変わりますので、必ず最新の公式情報と、顧問税理士への確認をお願いします。

使うときの考え方——「どうせ上げるなら、設計して上げる」

わたしがこの税制についてお伝えしたいのは、細かな計算より前に、順番の話です。多くの会社は、賃上げを「せざるを得ないからする」。そして決算が終わってから、税理士に言われて初めて税制の存在を知る。それでも適用できればよいのですが、増加率のわずかな差で要件に届かなかった、という事態は避けたいところです。

賃上げを決める前に、次の三つを整理しておくことをおすすめします。

また、雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金など)や、賃上げが加点・要件になっている補助金と、同じ人件費の動きが複数の制度にまたがって効いてくる場合があります。人件費はいまや、経営の中でいちばん制度が集まっている領域です。

実務の進め方としては、期首、つまり事業年度の初めに顧問税理士へ「今年は賃上げ税制を意識したい」と一言伝えておくのがいちばん確実です。決算間際では打てる手が限られますが、期首なら昇給の設計から間に合います。この税制は法人だけでなく、青色申告の個人事業主が対象になる場合もあります。従業員を雇っている一人親方や個人の工場主の方も、対象になるかどうか一度確かめてみてください。

まとめ

賃上げ促進税制は、給与を増やした会社の税負担を直接軽くする制度です。増加率の要件・控除率・繰越の仕組みは年度により変わります。最新は公式の公募要領・国税庁等の案内でご確認ください。

大切なのは、賃上げを「コスト」とだけ捉えず、税制・助成金・補助金の加点まで含めた「設計できる投資」として扱うことです。昇給の辞令を出す前に、一度全体の絵を描く。その順番だけで、同じ賃上げでも会社に残るお金が変わってきます。

本記事は執筆時点の情報にもとづく一般的な解説であり、税制の適用を保証するものではありません。要件・控除率・繰越の扱いは制度や年度により変わります。最新の内容は必ず公式の案内・公募要領でご確認ください。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
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