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業務改善助成金と最低賃金——賃上げと設備投資をセットで
毎年秋になると、最低賃金の引き上げのニュースが流れます。「また上がるのか。うちはもう限界だよ」。そんな声を、加古川の町工場でも建設会社の事務所でも聞きます。人件費は待ったなしで上がっていく。それなら、上がる分を「生産性の向上」で吸収するしかありません。その橋渡しをしてくれるのが、業務改善助成金です。
この記事では、業務改善助成金の仕組みと最低賃金との関係、対象になる投資の例、そして進め方の注意点をお話しします。
どんな助成金か
業務改善助成金は、厚生労働省の制度で、一言でいえば「社内の最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資などを行った中小企業に、その投資費用の一部を助成する」というものです。
ポイントは、賃上げと設備投資がセットになっている点です。賃上げだけでも、設備投資だけでも対象になりません。「人の給料を上げる。そのために、仕事の効率を上げる投資をする」。この両輪を回す会社を応援する制度です。
助成額は、賃金を何円引き上げるか、何人の賃金を引き上げるかによって上限が変わる仕組みになっており、数十万円から数百万円規模になる場合があります。助成率も事業場内最低賃金の水準などにより変わる場合があります。金額・率・要件は年度により変わります。最新は厚生労働省の公式の交付要綱・公募情報でご確認ください。
最低賃金との関係
この助成金を理解する鍵は、「事業場内最低賃金」という考え方です。地域別の最低賃金(兵庫県なら兵庫県の額)とは別に、自社の中で一番低い時給の方の賃金を指します。業務改善助成金は、この社内の最低ラインを計画的に引き上げる会社を対象にしています。
ここで大事な視点をひとつ。地域別最低賃金は、近年、毎年のように引き上げられています。つまり、社内の最低賃金がぎりぎりの会社は、いずれにせよ近い将来、賃上げを迫られる可能性が高いのです。どうせ上げることになるなら、後手に回って上げさせられるのではなく、先手を打って計画的に上げ、そのタイミングで助成金を使って設備投資もやってしまう。同じ賃上げでも、会社に残るものがまるで違います。ちなみに、自社の最低ラインがいまいくらか、即答できない社長さんは意外に多いものです。まずは賃金台帳を開くところから始めてください。
対象になる投資の例
生産性向上のための投資として、次のようなものが対象になり得ます。
- 機械設備の導入——加工機、リフト、搬送機器など、作業時間を短縮する設備
- POSや受発注システムなどのソフトウェア・システム導入
- 作業手順の見直しにかかる専門家によるコンサルティング
- 業務効率化につながる車両や什器(対象になるかは要件次第です)
単なる old to new の入れ替えではなく、「この投資で作業時間がこれだけ減る」「一人あたりの生産性がこう上がる」という説明がつくことが大切です。パソコン等の汎用品は対象外とされる場合があるなど、細かい線引きがあるので、機器選定の前に要件を確認してください。判断に迷う場合は、労働局の窓口やコールセンターに事前に確認できます。確認した内容を記録に残しておくと、あとの手続きも落ち着いて進められます。
進め方と注意点
進め方の大枠は、次のとおりです。
- ①社内の賃金の現状を確認する(誰が事業場内最低賃金か)
- ②引き上げ額と対象人数を決め、導入したい設備を具体化する
- ③交付申請書と事業実施計画を労働局に提出する
- ④交付決定後に、設備の発注と賃金の引き上げを実施する
- ⑤事業実施報告を提出し、助成金を受け取る
ここでも順番が命です。原則として、交付決定より前に設備を発注したり、賃金を引き上げたりしてしまうと、対象外になる場合があります。「賃上げはもう済ませました」というご相談では、打てる手が限られてしまいます。賃上げを決める前、設備を買う前に、まず制度を確認してください。
また、予算の執行状況によっては年度の途中で受付が締め切られる場合があります。使うと決めたら、早めに動くに越したことはありません。
まとめ——賃上げを「守り」から「攻め」に変える
最低賃金の引き上げは、中小企業にとって重い話です。でも、どうせ避けられないなら、それを設備投資の好機に変えてしまう。業務改善助成金は、そのための道具です。賃上げと生産性向上を同時にやり切った会社は、採用でも価格交渉でも一段強くなります。毎年の最低賃金のニュースを、ため息ではなく、投資計画の合図として聞いていただけたらと思います。
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