ブログ
人材開発支援助成金で研修費をまかなう
「若手に技能講習を受けさせたいけど、講習代も高いし、その間の給料も出るし、現場も抜けるし……」。建設業の社長さんの、この三重のため息。よく分かります。でも、その講習代と、講習中の給料の一部を、国が助成してくれる場合があると言ったら、どうでしょうか。それが人材開発支援助成金です。
この記事では、この助成金の仕組みと、どんな研修が対象になり得るか、使うまでの流れを、製造業・建設業の視点でお話しします。
どんな助成金か
人材開発支援助成金は、厚生労働省の雇用関係助成金のひとつで、会社が社員に職業訓練——つまり研修や講習——を計画的に受けさせた場合に、訓練にかかった経費と、訓練期間中に支払った賃金の一部が助成される制度です。
ここが大きな特徴です。多くの経営者は「講習代の補助」だけを想像されますが、この助成金は訓練中の賃金にも助成が出る場合があります。社員を研修に出すと、その日の仕事は進まないのに給料は払う。この「見えない負担」まで面倒を見てくれる設計は、人を育てたい中小企業にとってありがたいものです。
助成率は経費の何割、賃金は1人1時間あたり何円、という形で定められ、中小企業は手厚くなる場合が多いです。具体的な率・額は年度により変わります。最新は厚生労働省の公式の支給要領・パンフレットでご確認ください。
どんな研修が対象になり得るか
コースはいくつかに分かれていますが、製造業・建設業で検討されやすいのは、次のような場面です。
- 技能講習・特別教育——玉掛け、フォークリフト、足場の組立てなど、現場仕事に直結する講習(コースの要件を満たす形での実施が前提です)
- 資格取得のための講習——施工管理技士や技能士など、業務に関連する資格の受験対策講座が対象になる場合があります
- 新人向けの基礎訓練——新入社員に業務の基礎を計画的に教える訓練
- デジタル関連の訓練——CADやITツールの操作など、業務のデジタル化に対応する訓練は、手厚いコースの対象になる場合があります
一方で、どんな研修でもよいわけではありません。訓練時間数の下限や、業務との関連性、実施方法(OFF-JTであることなど)に条件があります。また、建設業には建設事業主向けの別枠の助成制度が設けられている場合もあり、そちらのほうが有利なこともあります。「この研修、対象になるか」は、申し込む前に確認するのが鉄則です。
使うまでの流れ——ここでも「計画が先」
大まかな流れは次のとおりです。
- ①どの社員に、どんな訓練を受けさせるかを決める
- ②訓練実施計画を作成し、訓練開始前に労働局へ届け出る
- ③計画に沿って訓練を実施する(出席状況や経費の記録を残す)
- ④訓練修了後、所定の期間内に支給申請する
もうお気づきかと思いますが、ここでも順番が命です。訓練を始めてしまってから、あるいは終わってから「助成金を使いたい」と思っても、原則として間に合いません。計画届は訓練開始前に出す。研修の申し込みボタンを押す前に、まず制度を確認する。この一手間で、数十万円単位の差がつく場合があります。
なお、出勤簿・賃金台帳などの労務書類が整っていることが審査の前提になる点は、他の雇用関係助成金と同じです。また、申請手続きの代行は社会保険労務士の独占業務にあたるため、実務は社労士と連携して進める形になります。
人が辞めない会社への投資として
助成金の話から半歩離れて、経営の話を。人手不足の時代、「教育してくれる会社」は、それだけで採用市場で選ばれます。求人票に「資格取得支援あり」と書ける会社と書けない会社では、応募の集まり方が違ってきます。そして、会社のお金で資格を取らせてもらった社員は、簡単には辞めません。
つまり、研修費は「経費」ではなく「採用と定着への投資」です。その投資の元手を、助成金で軽くできる。人材開発支援助成金は、使い方次第で、人の悩みの根っこに効く制度だと思っています。
まとめ——研修の申し込み前に、ひと呼吸
社員に受けさせたい講習や資格が頭に浮かんだら、申し込む前に、ひと呼吸おいて制度を確認してください。計画届ひとつで、講習代と賃金の一部が戻ってくるかもしれません。人を育てる決断は素晴らしい。その決断を、少しでも軽い負担で実行できるように段取りするのが、わたしたち専門家の仕事です。
製造業・建設業のための
補助金助成金30選(書籍版)を無料配布中
人材開発支援助成金を含め、人材育成・賃上げのカテゴリを中心に30の補助金・助成金を厳選して一冊にまとめました。人を育てる制度の下調べにお使いください。
無料で受け取る