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交付決定前の発注がダメな理由
補助金の世界には、いくつかの重い原則があります。その中でもいちばん重く、いちばん多くの会社が痛い思いをしているのが、これです。「交付決定の前に発注・契約・支払いをした経費は、補助の対象にならない場合が多い」。
別の記事で「順番」の全体像はお話ししましたが、この記事では、この原則そのものを掘り下げます。なぜダメなのか。理屈が腹に落ちていれば、うっかりは起きません。
「採択」と「交付決定」は別物——ここが最大の分かれ道
まず、いちばん間違えやすいところから。補助金の手続きには、「採択」と「交付決定」という、よく似た二つの節目があります。
- 採択——あなたの事業計画が選ばれました、という通知。いわば内定です
- 交付決定——経費の内訳まで審査したうえで、補助金の交付を正式に決定する手続き。いわば本契約です
採択の通知はうれしいものです。祝杯を挙げて、勢いで機械を発注したくなる。しかし、多くの制度では、発注してよいのは交付決定のあとです。採択と交付決定のあいだには、交付申請という手続きを挟んで一定の期間が空く場合があります。この期間に発注してしまい、その経費が対象外になる——現場で実際に起きている、いちばん悔しいパターンです。
理由①——補助金は「これからの挑戦」を後押しする仕組みだから
ではなぜ、こんなルールになっているのか。理由の一つ目は、補助金の目的そのものにあります。
補助金は、税金を使って「補助がなければ踏み切りにくい投資や挑戦」を後押しする政策の道具です。交付決定の前に自力で買えたものは、理屈のうえでは「補助がなくても実行できた投資」ということになります。過去の買い物への割引券ではなく、これからの挑戦への後押し。この建て付けから、「決定前の支出は対象外」という原則が導かれています。
理由②——税金を使う以上、経理の透明性が求められるから
理由の二つ目は、お金の管理の問題です。補助金の原資は税金です。だから事務局は、対象経費が適正な手続きで、適正な価格で支出されたことを確認する義務を負っています。
交付決定を起点にすることで、「いつ、何に、いくら使ってよいか」の枠が先に確定し、そのあとの発注・納品・支払いを書類で追いかけられるようになります。相見積もりの取得や、発注書・納品書・請求書・振込記録といった証拠書類の整備が求められるのも、同じ理由です。順番が守られているからこそ、あとから第三者が検証できるのです。
例外はあるが、例外をあてにしない
制度によっては、「事前着手の承認」といった例外の仕組みが設けられる場合があります。緊急性の高い状況などで、交付決定前の着手を認める運用がされた例もあります。
ただし、これはあくまで例外です。承認に必要な手続きや対象期間は公募回ごとに異なり、そもそも例外の仕組み自体がない制度も多くあります。「前に大丈夫だったから今回も大丈夫」は通用しません。年度により変わります。最新は必ず公式の公募要領でご確認ください。原則は一つ、「交付決定の前に、お金の動く約束をしない」です。
実務での安全ライン
現場でわたしがお伝えしている目安は、次のとおりです。
- 見積もりを取るのは基本的に問題ありません——むしろ申請に必要な場合が多いです
- 発注書を出す・契約書を交わす・手付金を払う——これらは「お金の動く約束」であり、交付決定後が原則です
- 迷う行為(仮押さえ、内示、口頭の約束など)は、実行する前に事務局か支援者に確認する
- 発注解禁のタイミングを、スケジュール表に明記しておく——社内の担当者が先走らないためです
あわせて、見積書には有効期限がある点にも気を配ってください。申請から交付決定までの期間が長いと、見積もりの取り直しや価格改定が発生する場合があります。取引先には「補助金の関係で、発注は交付決定後になります」とあらかじめ伝えておくと、双方が段取りしやすくなります。
まとめ——理屈が分かれば、怖くない
交付決定前の発注が対象外になるのは、意地悪ではなく、「これからの挑戦を後押しする」「税金の使い道を検証できるようにする」という補助金の性格からくる必然です。理屈が分かれば、やるべきことは単純で、発注のゴーサインを交付決定のあとに置く、それだけです。
納期の都合で「そんなに待てない」という場合も、公募スケジュールの選び方や段取りの組み方で解決できることがあります。買いたい設備と希望の納期が決まったら、発注の前に、一度ご相談ください。
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