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キャリアアップ助成金の基本
「長く働いてくれているパートの職人さんを、そろそろ正社員にしてやりたいんです」。こういうお話をうかがったとき、わたしが必ず確認するのが、キャリアアップ助成金です。人を大事にしようとする会社の背中を、国が押してくれる制度だからです。
この記事では、キャリアアップ助成金がどんな制度なのか、代表的なコース、そして使うために欠かせない「順番」の話をします。
どんな助成金か
キャリアアップ助成金は、厚生労働省の雇用関係助成金のひとつです。有期契約社員、パート、派遣社員といった、いわゆる非正規雇用の方の待遇を良くする取り組み——正社員への転換や処遇の改善——を行った会社に、助成金が支給される制度です。
補助金との大きな違いは、競争がないことです。補助金は審査で採択・不採択が分かれますが、雇用関係の助成金は、要件を満たして正しく手続きすれば受給できる場合が多い。そのかわり、要件の確認と書類の整備がとても細かい。性格がまったく違う制度だと考えてください。
代表的なコース
キャリアアップ助成金にはいくつかのコースがありますが、中小企業でよく検討されるのは次のあたりです。
- 正社員化コース——有期契約やパートの方を正社員に転換した場合。1人あたり数十万円規模の助成が受けられる場合があり、この助成金の代表格です
- 賃金規定等改定コース——非正規の方の基本給の賃金規定を増額改定した場合
- 賞与・退職金制度導入コース——非正規の方向けに賞与や退職金の制度を新たに設けた場合
- 社会保険適用時処遇改善コース——社会保険の適用にあわせて手当などで処遇を改善した場合(設置状況は時期により変わります)
コースの構成、支給額、加算の仕組みは頻繁に見直されます。年度により変わります。最新は厚生労働省の公式資料(支給要領・パンフレット)でご確認ください。
使うための前提——「計画が先」の鉄則
この助成金で何より大事なのは、順番です。キャリアアップ助成金は、取り組みの前に「キャリアアップ計画」を作成して労働局へ提出しておくことが前提になります。正社員に転換してしまってから「そういえば助成金があったな」と思い出しても、原則として間に合いません。
さらに、正社員化コースでは、転換前に就業規則などに転換制度の規定があること、転換後に賃金が一定割合以上増えていること、といった要件が課される場合があります。つまり、次の順番を守る必要があります。
- ①就業規則・賃金規定を整備し、転換制度を規定する
- ②キャリアアップ計画を作成し、労働局に提出する
- ③対象の方を正社員に転換する(賃金増額の要件を満たす形で)
- ④転換後、所定の期間の賃金を支払った後に支給申請する
「いいことをしたのだから、後からでも認めてくれるだろう」は、この世界では通用しません。善意の取り組みほど、先に段取りを確認していただきたいのです。
書類の整備が土台になる
雇用関係の助成金は、出勤簿、賃金台帳、雇用契約書、就業規則といった労務書類が支給審査の土台になります。日頃からこれらが整っている会社は申請がスムーズですが、「就業規則は昔作ったきり」「雇用契約書は交わしていない」という会社は、まず足元の整備からになります。
これは遠回りに見えて、実は本丸です。労務書類の整備は、助成金のためだけでなく、労使トラブルの予防、採用力の強化、そして建設業なら経審や許可の維持にもつながる、会社の土台工事だからです。助成金は、その工事の費用を回収する機会だと考えると、取り組む意味がはっきりします。
なお、キャリアアップ助成金の申請手続きの代行は、社会保険労務士の独占業務にあたります。わたしのところにご相談いただいた場合も、申請実務は信頼できる社労士と連携して進める形になります。経営全体の中でどの制度をどの順番で使うか、という設計のところで、わたしがお手伝いします。
まとめ——人を大事にする会社こそ、使ってほしい
キャリアアップ助成金は、「非正規の人を正社員にする」「待遇を上げる」という、本来ならコストが先に立つ決断を、後押ししてくれる制度です。人手不足の時代、正社員登用の仕組みがある会社は、採用でも定着でも強い。どうせやるなら、制度を正しく使って、会社の負担を軽くしながらやりましょう。合言葉はいつもどおり、「決める前に」です。
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