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IT導入補助金の使いどころ
「うちはITなんて縁がないから」。製造業や建設業の経営者の方から、よくうかがう言葉です。ところが、話を聞いていくと、見積書を毎回手書きで作っていたり、原価の集計に何日もかかっていたり、勤怠をタイムカードと電卓で締めていたりする。それ、まさにIT導入補助金の出番かもしれません。
この記事では、IT導入補助金の仕組みと、製造業・建設業での現実的な使いどころ、そして申請時に知っておきたい独特のルールをお話しします。
どんな補助金か
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が業務用のITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)を導入する費用の一部を補助する制度です。補助率は費用の2分の1程度が目安とされることが多く、枠によってはそれより手厚くなる場合もあります。上限額も枠ごとに異なります。金額・率・対象は年度により変わります。最新は公式の公募要領でご確認ください。
この補助金には、他の補助金と大きく違う特徴がひとつあります。それは、「何を買ってもいい」わけではなく、あらかじめ登録されたITツールの中から選ぶ、カタログ方式に近い仕組みだという点です。そして申請も、自社単独ではなく「IT導入支援事業者」と呼ばれる登録済みの事業者(ベンダーや販売店)と組んで行います。
つまり、「どのツールを、どの支援事業者経由で入れるか」が決まらないと、申請の土俵に乗りません。ここが最初の分かれ道になります。
製造業・建設業での使いどころ
わたしがご相談を受ける範囲では、次のような場面で検討する価値があると感じています。
- 見積・受発注・請求をひとつのシステムにまとめて、転記作業をなくす
- 生産管理・工程管理システムを入れて、納期の見える化と原価把握を進める
- 建設業で、施工管理アプリを入れて現場写真・図面・工程の共有を一本化する
- 会計ソフト・勤怠・給与のクラウド化で、月次の締めを早くする
- インボイスや電子帳簿保存への対応をきっかけに、経理まわりを刷新する
共通するのは、「人がやらなくてもいい作業に、人の時間が食われている」状態の解消です。人手不足の時代、事務作業を1日減らせれば、その1日を現場や営業に回せます。ITツールの導入は、設備投資ほど派手ではありませんが、効き目が長く続く投資だと思います。
申請時の注意点
使いどころと同じくらい大事なのが、この補助金ならではの注意点です。
- 登録済みのITツールだけが対象です。「使いたいソフトが登録されていなかった」という場合もあるので、先にツール側を確認します
- パソコンなどのハードウェアは、枠によって対象になる場合とならない場合があります
- 交付決定前に契約・支払いをしたものは、原則として対象外です
- 導入後も、数年間にわたって事業実施の報告が求められる場合があります
- GビズIDなど、電子申請の準備に日数がかかります
とくに順番の話は、何度でも繰り返します。「もう契約しちゃったんですけど、補助金使えますか」というご相談には、残念ながら打てる手がほとんどありません。ツール選びの段階、つまり決める前にご相談ください。あわせて、補助金の公募スケジュールとツールの導入時期がかみ合うかも、早い段階で確かめておきたいところです。
導入して終わり、にしないために
もうひとつ、制度の話から少し離れますが、大事なことを。ITツールは、入れただけでは何も変わりません。現場の人が使いこなして、初めて効果が出ます。補助金で導入コストを下げられたとしても、社内に「使う体制」がなければ、月額費用だけが残ります。
ですから、検討の順番は「補助金があるから何か入れよう」ではなく、「この業務のこの手間をなくしたい。そのためのツールはどれか。それに補助金は使えるか」であるべきです。目的が先、制度はあと。この順番を守るだけで、導入の成功率はずいぶん変わると感じています。
まとめ——事務の手間は、我慢するものではありません
IT導入補助金は、設備投資系の補助金に比べると金額は小ぶりな場合が多いですが、そのぶん取り組みやすく、効果が日常業務に直結します。「毎月この作業に追われている」という定番の手間があるなら、それはITで解消できるかもしれませんし、その費用の一部を国が持ってくれるかもしれません。まずは、いまの手間を書き出すところから始めてみてください。書き出した手間の一覧は、そのまま支援事業者への相談メモになり、ツール選定の物差しにもなります。紙一枚の棚卸しから、事務の景色は変わり始めます。
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